スキー場やスキューバダイビングショップなど、体験アクティビティを提供する事業者にとって、参加者を集められるかが生命線。
そんな中、日本へのインバウンド(訪日外国人)需要はコロナ禍後に急回復し、2024年には訪日客数が約3,686万人に達して過去最高だった2019年(約3,188万人)を上回りました。
旅行消費額も増加傾向にあり、2023年の訪日外国人旅行消費額は約5.3兆円と2019年比約110%(9.9%増)に達しています。
このようにインバウンド市場が拡大する中、海外からの集客を取り込むことが体験型事業者の大きなチャンスとなっています。しかし、海外からの旅行客を効率的に集客するにはオンラインでの予約対応が欠かせません。
実際、訪日外国人観光客の約45%が旅行プランや宿泊を海外OTA(Online Travel Agency)経由で予約しているとのデータもあり(2019年時点では約30%)、コロナ後にオンライン予約利用率が一層高まっています。
加えて、個人旅行客(FIT)の増加に伴い、自国の言語で事前に体験予約を済ませてから来日するケースが増えています。
熊本県への海外観光客も増加しています
熊本県の観光産業は近年、目覚ましい成長を遂げています。2024年の最新データによると、外国人宿泊者数は2019年同期比で42.3%増加し、特に注目すべきは、「ONE PIECE」などのコンテンツツーリズムを活用した地域で、外国人観光客の滞在者数が大幅に増加していることです。
例えば宇土市では2019年度比で7.33倍という驚異的な伸び率を記録しています。
さらに、TSMCの進出に伴う外国人観光客の更なる増加が期待される中、観光消費額も過去最高を更新し続けており、インバウンド観光は熊本県の経済における重要な成長エンジンとなっています。
観光事業者には効率的な予約管理の強化が求められる
このような急速な成長と多様化する旅行者ニーズに対応するため、観光事業者には効率的な予約管理システムとインバウンド対応の強化が求められています。
こうした状況で、「JTB BOKUN(ボークン)」という予約管理システムが、インバウンド集客を強化したい事業者から注目を集めています。本記事では、JTB BOKUNを活用するメリットや具体的な機能、海外からの予約を獲得する方法について解説します。
インバウンド集客の課題とデジタル化の必要性
インバウンド需要を取り込むには、従来の口コミや旅行代理店任せだけでは不十分です。
海外の旅行者にリーチするにはデジタル上の露出を増やし、24時間多言語で予約を受け付けられる体制を整える必要があります。
例えば、日本のスノーリゾートに関する調査では、「多言語対応の遅れ」が外国人スキー客受け入れの課題として指摘されています。
せっかく日本に興味を持っていても、予約情報が外国語で提供されていなかったり、オンライン決済ができなかったりすれば、潜在顧客を逃してしまいかねません。
また、スキーやダイビングといった体験型商品は空席=売上機会の損失です。
短いシーズンや天候に左右されるビジネスでは、直前予約や複数経路からの予約にも即応して販売機会を最大化することが重要です。
コロナ後は「モノ消費」より日本ならではの体験を求める「コト消費」志向が高まっており、外国人観光客の多くはスキーやダイビング、日本文化体験などユニークなアクティビティに強い関心を示しています。
この追い風を活かすには、自社の商品を世界中から予約できる状態にしておく必要があります。 JTB BOKUNは、こうした課題を解決し得るツールとして誕生しました。では具体的にどのようなシステムで、何ができるのかを見ていきましょう。
JTB BOKUNとは何か?
JTB BOKUN(ボークン)は、ツアーや体験アクティビティに特化したオンライン予約・販売管理システムです。
JTBがTripAdvisor傘下のシステム「Bókun」のライセンス提供を受け、2021年から日本国内向けに展開しており、既に1,500社以上の事業者が導入しています。
ガイドツアー、アウトドア体験、文化体験プログラム、DMOや観光協会まで、規模や業種を問わず利用されており、特にインバウンド対応を強化したい事業者から支持されています。
JTB BOKUNを導入すると、自社ホームページや複数の販売チャネルでの予約受付を一元管理できるようになります。例えば、自社サイトに埋め込む予約用ウィジェットからの申込みも、海外の主要OTA経由の予約も、全てBOKUN上で在庫連動・管理が可能です。
このように「自社+OTA」の統合的な予約プラットフォームとして機能する点が、大きな特徴です。また24時間365日いつでも予約受付・決済が可能となるため、深夜や時差のある国からの予約にも取りこぼしなく対応できます。
さらに、JTB BOKUNは約30言語表示と30種類以上の通貨決済に対応しています。
これにより、英語はもちろん中国語や韓国語をはじめ世界中の旅行者が母国語・自国通貨でストレスなく予約手続きを完了できる環境を整えられます。多言語対応はインバウンド集客の鍵であり、後述するように海外ユーザーの予約ハードルを大きく下げます。
JTB BOKUNの主な機能とメリット
多言語・多通貨対応で世界中の顧客にアプローチ
約30言語対応の予約画面により言語の壁を取り除きます。例えば商品説明や予約フォームを英語・中国語などに切り替えて表示可能です。また主要通貨でのオンライン決済に対応しているため、海外ゲストは為替レートを気にせず自国通貨建てで支払いできます。
これにより、日本語がわからない旅行者でも安心して事前予約ができ、集客の母数が飛躍的に拡大します。
海外OTAとのシステム連携による販路拡大
JTB BOKUNは20社以上の海外OTAと連携しており、代表的な例としてViator(Tripadvisor)、Klookなど世界的な体験予約サイトとシステム接続されています。
BOKUNに商品(ツアーや体験)情報を登録しておけば、それらOTA上でも販売可能になり、自動で在庫が同期更新されます。
これにより、例えば北海道のスキー体験が欧米豪の旅行者にはViator経由で、東南アジアの旅行者にはKlookやその他OTA経由で、といった形で世界中の顧客にリーチ可能になります。(別で接続が必要)
OTA経由予約と自社予約を一元管理できるためダブルブッキングも防げます。
予約エンジン(ウィジェット)で自社サイトから直接予約受付
専用の予約フォームウィジェットを自社のウェブサイトに埋め込むことで、自社サイトをオンライン予約対応にできます。これにより、お客様は事業者の公式ホームページ上でそのまま予約・決済まで完了可能です。
自社サイトで直接予約を受け付ければ、OTA手数料を抑えつつ直販率アップにもつながります。
在庫・日程管理の効率化とオーバーブッキング防止
複数チャネルからの予約在庫をBOKUN上で一元管理できるため、空き状況がリアルタイムに同期されます。
これにより、「自社サイトで満席表示になっている日に別のOTAから予約が入ってしまった」といったミスを防止できます。予約が入るたびに全チャネルの在庫数が自動調整されるため、管理者は手動で各サイトを更新する手間から解放されます。
結果としてスタッフの業務負荷軽減に加え、在庫の売り漏れ防止(直前予約にも対応可能)や過剰予約防止による顧客対応リスク低減といった効果があります。
オンライン決済対応で事前支払いがスムーズ
クレジットカード等によるオンライン事前決済にも対応しており、予約時に支払いまで完了できます。現地決済しかできない場合、旅行者は「本当に予約が成立しているか不安」「当日多額の現金を用意しなければならない」といった不安がありますが、事前決済ならノーショー(無断キャンセル)対策にもなります。
※カード決済を利用する際は決済代行会社との別途契約が必要です。
柔軟な料金プラン
初期導入費用は0円で、月額利用料+従量課金の3つのプランから選択できます。小規模事業者向けのエントリープランは月額1,900円+手数料3.5%と低コストで始められます。
例えば月額1,900円なら1日あたり約63円とコーヒー一杯以下の負担で導入可能です。
取引額が増えてきたらベーシック(4,900円+1.5%)やアドバンス(24,900円+1.25%)に切り替えて手数料率を下げることもでき、ビジネス規模に応じて無理なく運用できます。
さらに30日間の無料トライアルも実施しており、まずは試してから検討できるのも安心です。
(最新の料金はJTB BOKUN料金表をご覧ください)
データ分析・マーケティング活用
BOKUN上に蓄積された予約データや顧客情報を活用し、販売レポートの出力や分析が可能です。
どの国の顧客が多いか、どの季節に予約が集中するか等を把握することで、商品の改善やマーケティング施策(例えば多言語広告配信やプロモーション)の戦略立案に役立ちます。
データに基づいた意思決定により、インバウンド対応のPDCAを回しやすくなる点も見逃せません。
海外からの予約を効率的に獲得するためのポイント
それでは、実際にJTB BOKUNを活用して海外からの予約を増やすための具体的な方法やポイントを整理します。
インバウンド集客力を高めるうえで、以下の点に注力しましょう。
海外向けOTAへの積極的な商品展開
まずはBOKUNのチャネルマネージャー機能を使い、ViatorやGetYourGuideなど主要な海外OTAに自社の商品を掲載しましょう。欧米豪からの旅行者にはTripadvisor経由、アジアからの旅行者にはAgodaや現地発のOTAなど、それぞれ強い市場があります。
BOKUN連携済みOTAであれば管理画面から在庫連動できますし、仮に未連携のサイト(例:Klook等)があってもBOKUN上の在庫を見ながら手動更新することで対応可能です。
重要なのは「海外の人が普段使っているプラットフォーム上に自社商品を露出させる」ことです。
旅行者は自分に馴染みのあるサイトで探す傾向がありますから、複数のOTAに載せておくことで発見される確率が上がります。
各OTAへの掲載ページは写真や説明文を充実させ、魅力が伝わるように工夫しましょう。なお、OTA経由の予約でもBOKUN上で一元管理されるため、煩雑さは気にせず運用に慣れながら「出せるところには全て出す」くらいの姿勢がおすすめです。
自社ホームページの多言語化と直販強化
OTA任せにせず、自社の公式サイトからの直接予約も狙いましょう。BOKUNの多言語ウィジェットを導入すれば、自社サイト上で英語や中国語による予約受付が可能です。
まずはサイト自体に多言語の説明ページを用意し、SEO対策も含め海外からアクセスを集めます。その上で「Book Now」「予約する」といったボタンからBOKUNの予約フォームに誘導し、ユーザーが離脱せず予約完了できる導線を作ります。
自社サイト予約はOTAの高額手数料(一般に15%以上)を抑えられるメリットがあります。例えば訪日客の予約の一部でも自社直販に切り替えられれば、その分利益率が向上します。
多言語ページを整備する際は、プロの翻訳やネイティブチェックを受けて信頼感のある文章にすること、モバイル対応を万全にすることも忘れずに。
今では、AIの精度も上がっているため初期コストを抑える場合はAIを駆使するのもおすすめです。
また、SNSや旅行系コミュニティで自社サイトの多言語ページがシェアされるようなコンテンツ発信も有効です。魅力的な写真や動画を交え、海外ユーザーの興味を引きましょう。海外向けの言語を翻訳して掲載するがおすすめです。
オンライン広告・キャンペーンの活用
OTAに登録しても初めからすぐ集客は期待できません。
OTAの中の口コミが不十分でOTA内の検索順位が期待できないからです。
そこで、インバウンド向けに特化したオンライン広告配信も検討しましょう。
例えばFacebookやInstagramでは地域と言語を絞って広告を出せますし、Google広告でも英語キーワードで自社サイトの体験プランを宣伝できます。
BOKUNで予約受け皿ができたら、クーポンコードを発行し、BOKUNの予約フォームで入力してもらう運用もおすすめです。
導入に最適な事業者像
JTB BOKUNは、1名の個人事業主から大規模旅行会社まで、幅広い規模の観光事業者に対応可能なシステムです。特にインバウンド集客の強化を目指す観光事業者に適しており、具体的には、ガイドツアー提供事業者、文化体験プログラム運営者、アウトドアアクティビティ事業者、観光施設運営事業者などが該当します。また、小規模な着地型観光事業者から大手旅行会社まで、業務効率化を追求するあらゆる規模の事業者に対応できます。
地域全体での観光DXを推進する組織にも効果的で、自治体・観光協会、DMO(観光地域づくり法人)、宿泊施設、観光施設運営団体などにおいても高い効果が期待できます。
JTB BOKUNの導入効果で特に期待できるケース
観光事業者が抱える課題は様々ですが、JTB BOKUNはそれらの多くを解決に導くことができます。特に効果を実感しているのが、インバウンド対応に課題を感じている事業者です。海外からの予約を増やしたい、多言語での案内をスムーズに行いたい、海外OTAでの販売を本格的に始めたい―そんな悩みを持つ事業者にとって、JTB BOKUNは最適なソリューションとなっています。
また、日々の業務効率化に悩む事業者にとっても、JTB BOKUNは心強い味方となります。予約管理の自動化、複数OTAの在庫一元管理、オーバーブッキングの防止など、煩雑な業務を大幅に効率化できます。
さらに、観光DXを推進したい事業者にも、JTB BOKUNは絶好のスタートとなるでしょう。オンライン予約・決済システムの導入、予約管理のペーパーレス化、顧客データの一元管理など、デジタル化による恩恵を素早く実感できます。
まとめ
JTB BOKUNは、インバウンド対応と業務効率化を同時に実現する強力なソリューションです。世界規模での販路拡大、業務効率の大幅な改善、予約管理の自動化によるミス防止、データに基づく経営判断の実現など、多くの価値を提供します。観光産業のデジタル化が急速に進む中、JTB BOKUNの導入は、競争力の強化と持続可能な事業運営の実現に向けた重要な一歩となるはずです。導入をご検討の際は是非当社へご相談ください。