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【制作物紹介】熱力学シミュレーター

三回目となりました、金沢大学 国際基幹教育院様からのご依頼です。
今回制作したのは、『ジュールの実験』のシミュレーターです。

これまでの制作物は以下をご覧ください。

『ジュールの実験』は、エネルギーの単位J(ジュール)に名を残す、イギリスの物理学者ジェームズ・プレスコット・ジュールが1843年に行った実験です(ジュールは熱力学の実験をいくつか行っていますが、ここでは高校物理の教科書にも出てくる羽根車の実験を指します)。

その当時、仕事が熱に変換されるということがわかってきていました(ここで言う「仕事」とは力学的な仕事、つまりエネルギーのことです)。そして、この仕事と熱の対応関係「熱の仕事当量」を求めるために行ったのが、今回の実験です。

水を入れた容器の中に羽根車が入っています。この羽根車は容器の外のおもりとロープでつながっていて、おもりが降下すると羽根車が回る仕組みになっています。
羽根車が回転すると、摩擦熱によって水の温度が上昇します。これはつまり重力がおもりにした仕事(重力×移動距離)が羽根車を通して熱に変わったことを示します。

この温度上昇を精密に測定することで、熱と仕事の関係が計算できるということです。

重力のする仕事をW、液体が得た熱量をQ、熱の仕事当量をJとすると、この関係は次の式で表されます。

W = J Q

重力のする仕事Wは、
mはおもりの質量、gは重力加速度、hはおもりの移動距離)

W = m g h

水が得た熱量Qは、
mLは液体の質量、CLは液体の比熱、ΔTは上昇温度)

Q = m L C L ΔT

なので、熱の仕事当量Jは、

J = m g h m L C L ΔT

と求まります。

今回のシミュレーターでは、熱の上昇から比熱を求めて、なんの液体かを調べる実験に使われるということでしたが、原理は同じです。

実際に動いている動画を用意しましたのでご覧ください。

おもりの質量と高さを変更できるようになっています。
スタートすると、簡易的なアニメーションとともに温度計の目盛りが上昇していきます。

液体の質量や比熱は設定ファイルで書き換えることができるため、様々な液体で実験することが可能です。

また、外部への熱流出も再現しているため、おもりが地面についた後も温度は変化します。
おもりは極力ゆっくり一定の速度で降下する必要がある(そうでないと重力の仕事がおもりの運動に取られてしまう)ため、内部的に等速で降下しています。高さを大きくすると、その分着地まで時間がかかり、熱流出も大きくなってしまいます。
この熱流出の影響で一回の実験では正確な値を出すのは難しく、パラメーターを変えてなんどか試してみなければいけません。

温度が上昇しすぎると温度計が壊れたり、おもりが重すぎると装置が壊れて停止するといったギミックも搭載しています。

『ジュールの実験』は熱と仕事の関係を解き明かし、その後エネルギーの保存則へと繋がっていく重要な実験です。しかし、装置の準備が難しく、学校で習っても実際に実験をしたという方は、あまりいないのではないでしょうか。

簡易的なシミュレーターですが、実際にジュールの実験の動きを見ることができるというのは、とても有意義なものになると思います。

引き続いて、このような機会を与えてくださった金沢大学様に感謝を申し上げます。

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